以前は目覚まし時計がないと起きられなかったのに、50代になってから、朝4時や5時に自然と目が覚めてしまう——そんな変化に戸惑っている方は少なくありません。
もう一度眠ろうとしても目が冴えてしまい、結局そのまま起きてしまう。「年のせいだから仕方ない」と流してしまう人もいれば、「このまま眠れない日が増えたらどうしよう」と不安になる人もいます。
今日は、この「早朝に目が覚める」という現象について、具体的な場面を想定しながら、生活の中で見直せそうなポイントを整理していきます。
早朝に目が覚めるのは「中途覚醒」とは分類が異なること
眠っている途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」については、以前の記事夜中に目が覚める原因と見直したい習慣で取り上げました。不眠の症状は、寝つきにくい「入眠障害」、途中で目が覚める「中途覚醒」、予定より早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」など、いくつかのタイプに分けて説明されることがあります。
これらは医学的な診断名というより、症状の現れ方を説明するための一般的な分類として使われている呼び方です。
今回この記事で取り上げるのは、このうち早朝覚醒にあたる目覚めについてです。ただし、これらはきっちり線引きできるものではなく、同じ人に複数のタイプが重なって現れることもあります。
例えば、夜11時に布団に入り、夜中の2時や3時に一度目が覚めても、しばらくすればまた眠りに戻れる場合は「中途覚醒」に近いパターンです。
一方、同じように夜11時に布団に入り、起きる予定は6時や7時なのに、4時や5時の時点ではっきり目が覚めてしまい、そのあと眠気が戻らない場合は、今回取り上げる「早朝覚醒」に近いパターンといえます。
50代で起こりやすい生活リズムの変化
はっきりと原因を一つに断定することはできませんが、加齢に伴って体内時計や睡眠の状態が変化していくことが紹介されています。加齢により夜間のメラトニン(睡眠に関わるホルモン)の分泌が減り、睡眠のリズムが前倒しになりやすいこと、また深いノンレム睡眠の時間が若い頃より短くなり、眠りが浅くなりやすいことが挙げられています。
眠りが浅くなると、ちょっとした物音や尿意などでも目が覚めやすくなり、中途覚醒や早朝覚醒につながりやすいと考えられています。
あわせて、生活そのもののリズムが変わる時期でもあります。例えば、次のような変化が重なる方もいます。
- 子どもの独立などで、家族のスケジュールに合わせる必要が減り、就寝時刻が徐々に早まっている
- 仕事の負荷や役割が変わり、夜遅くまで起きている理由が減った
- 定年や再雇用などで、平日と休日の生活リズムの差が小さくなった
- 夕食の時間が以前より早くなっている
- 日中、座っている時間が増え、体を動かす機会が減っている
こうした変化が重なると、就寝時刻が知らないうちに前倒しになり、結果として早朝の目覚めも早まっていく、という流れが起こりやすくなると考えられています。
生活の中で見直したいポイント
起きる時刻・寝る時刻を一定にする
早く目が覚めた分、日中に眠くなって早めに横になる——というパターンを繰り返すと、就寝時刻がどんどん前倒しになり、早朝の目覚めも早まっていくことがあります。まずは、起きる時刻をできるだけ一定に保つことから見直してみるのもひとつの方法です。
朝の光を意識的に浴びる
起きたらすぐにカーテンを開けて光を取り込む、可能であれば少し外に出てみるなど、朝の光を浴びるタイミングを意識してみると、体内時計が整いやすくなると言われています。
カフェインの摂り方を見直す
コーヒーや緑茶などのカフェインには覚醒作用があります。カフェインの感じ方には個人差がありますが、敏感な人は、就寝の5〜6時間前を目安に控えるとよいという情報が紹介されています。カフェインは体内で分解されるまでに数時間かかるため、「夕方だから大丈夫」と思っていても、実際には就寝時間に影響していることがあります。
アルコールとの付き合い方を見直す
寝る前のお酒は寝つきを良くするように感じられることがありますが、アルコールは深いノンレム睡眠を減らし、眠りの後半で目が覚めやすくする(中途覚醒・早朝覚醒が増える)ことが紹介されています。寝酒を習慣にすることは、睡眠の質という点ではすすめられていません。
日中の活動量を少し増やしてみる
日中にあまり体を動かさない日が続くと、夜の眠りが浅くなりやすいとも言われています。激しい運動でなくても、散歩や家事で体を動かす時間を意識的に増やしてみるのもひとつの方法です。
寝室の温度・光・音を整える
早朝は外が明るくなり始める時間でもあります。遮光カーテンで朝の光を調整する、室温を保つなど、寝室環境を見直すことも選択肢のひとつです。
朝4時・5時に目が覚めたときの過ごし方
実際に早朝に目が覚めてしまったとき、その場でどう過ごすかも悩みどころです。時間で厳密に区切れるものではありませんが、参考になる考え方をいくつか紹介します。
- 布団の中で「眠らなければ」と力を入れすぎると、かえって目が冴えてしまうことがあります。しばらく経っても眠れそうにないと感じたら、一度布団を出て、間接照明など弱い光の下で静かに過ごし、眠気が戻ってきたら再び布団に入る、という方法が行動療法の分野で紹介されています(「刺激制御法」と呼ばれる考え方のひとつです)。
- 起きる予定の時刻にかなり近い場合は、無理に二度寝を狙わず、そのまま起きてしまうという考え方もあります。
- どちらの場合も、スマートフォンやパソコンなど明るい画面を見ることは避けたほうがよいとされています。光の刺激で目が覚めやすくなることがあるためです。
布団の中で粘るか、いったん出るかという判断そのものについては、布団の中で粘る?いったん出る?でも取り上げているので、あわせてご覧ください。夜中に目が覚めたときの過ごし方全般は、時計を見て焦るときの7つの選択肢で詳しく紹介しています。
昼寝をする場合の考え方
早朝から起きていると、日中に眠気が出てくることもあります。昼寝自体は悪いものではありませんが、時間帯や長さによっては、夜の睡眠にさらに影響することがあります。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、日中に長い昼寝をとることは避け、活動的に過ごすことが望ましいとされています。目安として、昼寝は短時間にとどめ、夕方以降の仮眠は避けたほうがよいと紹介されています。
「眠いから」とだけ考えず、「今の眠気を昼寝で解消することが、今夜の睡眠にどう影響しそうか」という視点も持っておくと、昼寝との付き合い方を決めやすくなります。
まずは記録をつけて、自分のパターンを知る
「何時に目が覚めたか」だけでなく、いくつかの項目をあわせて記録しておくと、自分の生活のどこに関係がありそうか、少しずつ見えてくることがあります。早朝覚醒について振り返るときは、特に次のような項目が手がかりになりやすいです。
- 前の晩、布団に入った時刻
- 実際に眠りについたと思われる時刻(体感でよい)
- 目が覚めた時刻と、そのときの体の感じ(すっきり/だるいなど)
- 起きる予定の時刻まで、あとどのくらいだったか
- 前日の日中、どのくらい体を動かしたか
- 夕方以降にカフェイン・アルコールを摂ったか
- 昼寝をした場合、その時間帯と長さ
より詳しい記録の付け方は、睡眠日誌の7日間テンプレートで具体的なフォーマットを紹介しているので、あわせてご覧ください。
受診を考える目安
生活習慣を見直しても早朝の目覚めがつらく感じられる場合は、無理に自己判断で抱え込まず、医療機関への相談を考えるきっかけにしてよいと思います。特に次のような様子がある場合は、期間の長さだけにこだわらず、相談を検討してもよさそうです。
- 日中に強い眠気があり、集中力の低下や居眠りが増え、生活や仕事に支障が出ている
- 気分の落ち込みや、何をしても楽しめない感覚が続いている
- 家族などから、いびきや呼吸が乱れている様子を指摘されたことがある
- 生活習慣を見直しても、つらさが変わらない
なお、睡眠に関する相談の目安としては、こうした状態がある程度の期間続いているかどうかも、ひとつの参考になるという考え方が紹介されています。
ただし、具体的な日数や頻度の基準は情報源によって幅があり、医療機関での診断に使われる正式な基準として一律に示せるものではないため、この記事では具体的な数値は挙げていません。当てはまるからといって特定の病気であるとは限らず、記録があると、診察の際に状況を伝えやすくなります。
よくある質問
Q. 早朝に目が覚めるのは病気のサインですか?
A. 早朝の目覚めそのものは、50代前後でみられることがある変化のひとつであり、それだけで病気と決めつけることはできません。ただし、日中の生活に影響が出ている場合は、無理に様子を見続けず、相談を選択肢に入れておくと安心です。
Q. 昼寝をすると夜の早朝覚醒が悪化しますか?
A. 昼寝の長さや時間帯によります。長い昼寝や夕方以降の昼寝は、夜の睡眠リズムに影響しやすいと紹介されています。短時間の昼寝であれば、日中の眠気対策として取り入れやすいでしょう。
Q. 早朝に目が覚めたら、そのまま起きたほうがいいですか?
A. 起きる予定の時刻にかなり近い場合は、そのまま起きてしまうのもひとつの方法です。まだ時間がある場合は、無理に眠ろうとせず、しばらく経っても眠れなければ一度布団を出て静かに過ごす、という考え方もあります。
まとめ
50代になってからの早朝の目覚めは、この年代でみられることがある変化のひとつです。
中途覚醒とは分類が異なる目覚めであることを踏まえたうえで、起きる時刻・光の浴び方・カフェインやアルコールとの付き合い方・日中の活動量・寝室環境、そして早朝に目覚めたときの過ごし方や昼寝との付き合い方まで、生活の中で見直せるところから少しずつ試してみるのがよさそうです。記録を取りながら自分のパターンを知り、つらさが続くようであれば無理せず相談する、という流れを頭の片隅に置いておくと安心です。
参考にした情報源
(注1)〜(注4)、(注6)は公的機関・国立の医療研究機関による一次情報です。(注5)は医療機関(クリニック)が運営する解説記事で、行動療法として一般に紹介されている考え方の説明として参照しています。
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-001.html(不眠症状のタイプ分類。本記事ではこれらを診断名ではなく、症状を説明するための一般的な分類として使用しています)
- 公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット」高齢者の睡眠 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tyojyu-suimin/koreisha-suimin.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
- 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)病院「カフェインと睡眠」 https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sleep-column14.html
- 睡眠プライマリケアクリニック「眠れない夜に、布団で粘るのは逆効果?」 https://sleep1.jp/sleep_stimulus_control_therapy/(医療機関運営の解説記事)
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」検討会資料 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf


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